Vol.2 珈琲舎 雅

コースパの提供するブレンドコーヒーで最も深煎りの商品 「Sugar Toast

なんとなく懐かしい感じのするクラシックな苦味のあるコーヒーです。

このブレンドコーヒーを提供するのは、福島市で16年以上続く、珈琲屋

珈琲舎 雅(以下:雅)。

地元では長く愛される隠れた名店。代表作のブレンドコーヒー「空」を始め「花」「庭」など漢字一文字がその世界観を表現しているのが特徴です。

コーヒーアンドスパイスでは、雅の店主の山口雅俊さんに深煎りで広い世代の方に楽しんでもらえるようなブレンドコーヒーとして「Sugar Toast」の作成を依頼しました。

今回は、coffee and spice.(コースパ)が雅さんに、ブレンドの開発秘話や、お店のことについて、インタビューしてきました。

雅_山口さん

 

――雅さん。本日はお忙しいところインタビューのお時間を取って頂き、ありがとうございます。

 

雅:こちらこそ、わざわざ遠いところからお越しいただき、ありがとうございます。

 

――私が福島にいた頃から大好きなお店だったので、ぜひ雅さんと一緒にブレンド作りをしたいと思っていました。早速ですが、今回のブレンドに関して、お話を聞かせてください。

 

ブレンドのスペシャリストの新しいチャレンジ

今回、オリジナルブレンドコーヒーを作成するご依頼を頂いたときに、まず最も意識したのが、クラシックなコーヒーに、ちょっとだけアクセントをいれることです。

――アクセントですか?

はい。

今回はベースとなる豆としてコースパさん専用の深煎りのグァテマラを焙煎しました。ただ苦いだけではなくその奥にある甘味を感じて欲しいと思って、ブラジルのピーベリー(丸豆)を使ってみたんです。

ピーベリーは同じ木から取れる通常の豆よりもちょっとだけ甘味を感じられるんですよ。これをブレンドに利用したら、うまくハマったので今回のブレンドのアクセントとして取り入れました。
 

ピーベリーは火の入り方がぜんぜん違うから焙煎が結構難しいんです。こは焙煎士の腕の見せどころだと思っています。

 

ブレンドに対するこだわり

――雅さんのお店には、魅力的なブレンドがたくさんあります。トレンドとしては、シングルオリジンを扱うお店が多い中で、あえてブレンドに焦点を当てている理由はなんですか?

僕が珈琲始めた20数年前はシングルオリジンはストレート、スペシャリティはグルメ珈琲という愛称で呼ばれていて、まだ農園とか品種にこだわる感じではなかったんです。

秘密主義で、こだわりの強いおじさんが難しい顔して焙煎している感じの時代だったんんですよ。笑

僕はそこに片足を突っ込んでいて。 だからシングルオリジンを打ち出してもそんなに反響が大きくなかった。

あと、ブレンドのほうが自分の個性が出しやすいと考えていました。自由度が高くオリジナリティがだせるので。

ブレンドすると口当たりが良くなって不思議と飽きが来なくなる。
お母さんが作る弁当みたいに、ほぼ変わんないんだけど、毎日飲んでも飽きないコーヒー。 それを実現するには、ブレンドコーヒーが良いかなと。

その中でも、深煎りのコーヒーを提供するのが信条です。
※もちろん浅煎りや中煎りのブレンドもご用意していますよ。笑

若い子達が雅に来て一番苦いのを頼むんです。それで「コーヒーはこうじゃないと」と飲んでくれるのがすごく嬉しくて。

だから深煎りの、ほぼ変わらないんだけど毎日飲んでも飽きないコーヒー

提供したいと思っています。 

 

 

毎日がスペシャルは、僕にはつらい

僕は凡人だから、家ではボケっとコーヒーを飲みたい。笑

毎日僕はこうです!っていう個性的でスペシャルなコーヒーを出されると正直疲れちゃう。笑

スペシャルなものってそこに楽しみを自分でもっていて、今日は〇〇だから、そういうコーヒー飲もう!って楽しむのはすごく良い。

だけど、毎日だと・・・てなる!だからスペシャルなものはスペシャルなところに自分も飲みに行きたい。

コーヒーは、よくも悪くも人が出ちゃうから、自分の野暮ったさとか、田舎っぽさとかどこかに出ているかもしれない。でも、それを否定しないようにしているんです。

だから、自分らしい「普通の」ブレンドコーヒーを作るように意識しています。

僕はシングルオリジンを全く否定していないし、ストレートの豆にも良さはあるから、面白い豆があったら買いたいけれど、全面に強くは出さないと思う。。

 

miyabi_interview

コーヒーは自由にハッピーでいい

美味しいコーヒーの定義ってシチュエーションによって様々だと思う。どう淹れるかもそうだし、きっと誰が淹れたかも大事で。難しい顔をして淹れるんではなく、コーヒーを淹れること自体を楽しんでほしい。

変な話で、16年もお店でコーヒー淹れていると、「俺のほうが淹れ方が上手い」と言って帰って行く人もいる。笑 でもいつも来てくれて、コーヒー豆を買ってくれるんです。

それはそれでいいのかなって。笑

僕にも自分の思う美味しい淹れ方はあるけれど、自分のハッピーは自分で決めてほしいと思う。コーヒーは楽しむものだから、考えすぎて美味しいコーヒーを淹れることに苦しまないでほしい。

だから、ベターな淹れ方を聞かれたら答えるけれど、それ以上のことは言わないようにしているんです。

 雅_ドリップ珈琲

変わった人が評価される方がおもしろい

この間、コーヒー豆を10キロ釜の焙煎機に5キロ入れて、途中でまた5キロ追加する焙煎をしているのを雑誌で見たんです。僕からしたら「えー??」って感じなんだけど、新しいこと、今までではありえないことをやってビジネスとして成立するのはとてもすごいと思う。

そういう人が評価されるのは良い、予想の範囲内で収まるのではなく「挑戦的な人」が現れるのは良いことだとおもいます。

基準があるのは大切だけど、それに縛られる必要は無いですよね。 

僕も最近少し変わったことをしてみたくて、国産のデカフェを焙煎しています。

前から気になっていたデカフェに共通するクセみたいな香味がなく、すっきりしているのが特徴です。国産デカフェを広めようとトライとしている会社を少しでも応援できればと思っています。

 

珈琲舎 雅の歴史

――雅さんはいつから珈琲屋さんをはじめられてんですか?

 
もう20年以上前のことですね。最初はコーヒーの焙煎がやりたくて色々と探し回っていたら、大坊珈琲店さんで手回し焙煎機をみつけて

あ、これがいいなあ」って。

焙煎始めるのに、大きな焙煎機を買うお金もなかったから。

それで本を見たら合羽橋で売っていると書いてあったから、東京に行って、朝大坊さんが焙煎してるのを見てからコーヒー飲んで、銀座線に乗って合羽橋に行った。

開業してないから、名刺もなくて、田舎者丸出しで合羽橋の老舗のコーヒー器具屋さんで手回し焙煎機がほしいといったら

そんなものはねぇ」って言われました。笑

 

しょうがないから銀座線に乗り直して、もう一度大坊さんのところへ行って「すいません、それと同じのください!」と言ってみたんですよ。今思えばなかなか大胆な行動ですよね。人の道具そのまま欲しいと言うなんて、今だったら絶対できないけど。笑

そしたら、受注生産で時間かかるけどいいかい?と快く受け入れてくれたんです。

 

 ――その時点で開業するって決めていたんですか?

 

漠然とですが、決めてましたね。

焙煎に関しては無謀に始めたって感じ。

 

やっているうちに僕は喫茶店よりは、豆を売りたいなと思いはじめたんですよ。

ただ、量を作るには手回しは難しかったので親に頭下げて借金して、焙煎機を買いました。

今思えば、突然仕事はやめるは、金貸してくれって言うわ困った息子だった。笑

 

そうやってなんとか焙煎機を買ったのですが使い方がわからなくて・・。

納品に来たひとに「これどうやって使うんですか?」って聞いてしまいました。笑

そんなところから今までお店を経営できているんですから、本当に恵まれてますよね。

 

提供するブレンドの名前には、思いを込めて

雅さんのお店の豆は「空」を始め、漢字一文字のものが多いですが、なにか思い入れがあるんですか?

当時住んでいた家のベランダに壁を作って、焙煎機をいれて豆を売り始めました。もちろんそんな場所に誰もくるはずもなく、友だちに試し焼きしたのを配ったりして、少しずつ買ってくれる人を増やしていきました。

 

その中で協力してくれたのが、福祉ボランティアの「そら」っていうグループだったんです。

空_MIYABI

そらのメンバーは苦味のあるコーヒーが好きだったので、その人達のためにそういうブレンドを作りました。それがお店で一番最初のメニューになった「空」です。

「で、いろいろ作っていくうちに「空」の名前に合わせて、自然にからめた「花」「風」などのブレンドが増えていったんですよ。

在12種類のブレンドがありますが、それぞれ漢字のイメージが香味とも関連するように意識しています。

例えば「土」というブレンドは、益子の陶器販売店「もえぎ」さんの企画展用に作ったブレンドなので、焼き物から「土」という名前に。昔ながらのマンデリンを使ってどこか土っぽい香味も出しています。笑 

今回のブレンド名はコースパさんにお任せしましたが、「Sugar Toast」というネーミングが香味のイメージとピッタリでうれしかったです。
益子の陶器市にも呼んでいただけるようになり、飲食関係の方や陶芸家さんを紹介してもらいました。そこで通信販売や卸の仕事が増えていきました。


それでも最初は鳴かず飛ばずだったです。食べられなかったから3年間くらいはアルバイトが中心でした。店舗をおかずに通信とか卸とかで3年位ですかね。

どうしようかなと思っていた時に家庭の事情で実家に戻ることになって。その時も通販は続けていました。

落ち着いたタイミングで、自分もお店を出したいなと思って、物件を探していたらこの物件が見つかったんです。そこでまた父親に手を合わせました。

 

 ――お父さんがウチでの小槌。笑

 

ひどい話で、きちんとやっている人をみると恥ずかしいです。

自分は、親に甘えて「かじれる脛は、かじったほうが良い」という人生。笑
 

冷めても美味しいコーヒー

僕の転機となったのは、益子のもえぎさんとの出会いです。

当時は専務だった現在の社長さんは年齢も一緒で、すぐに色々なことを相談できるようになりました。その頃からもえぎさんでは店舗設計や家具作成の仕事も始めていて、雅の店舗も設計から施工までお願いしたんです。

そういえば益子の陶芸家さんも壁の塗装とか手伝いに来てくれましたね。

その時に作業中は手が離せない時があるから、コーヒーを淹れても冷めちゃうことが多いんだけど、うちのコーヒーは冷めても美味しいから買うんだと言ってくれました。


冷めてからも濁らずにきれいな、透明感のある珈琲。


そういうコーヒー作りをその時からずっと心がけています。

 

の名前の由来

 ――珈琲舎 雅の名前の由来を教えてください。

 

僕の名前がまさとしだから、その雅を取りました。

屋号に関しては、最初珈琲舎〇〇ってしたかったんですけど、なかなか良い名前を思いつかなくて、当初は私の名字の山口をとって、ヤマグチ珈琲といっていました。 

ただ、お店出すときにはスタッフの人もいたし、名字だと、自分が全面に出過ぎるかなと思って変えたんです

『雅』って、宮ぶという言葉が語源で、都会的で洗練された優雅さという意味があります。お店で珈琲を飲むときは、ちょっとだけ気持ちを高めて飲むものであってもいいのかなって。それで『雅』ってつけました。

だから使う器も大切にしています。

でも、商標登録の問題で、変えろって言われたらすぐ変えますが。笑

 

  焙煎機_雅

 

――雅さん。本日はありがとうございました!!

 
珈琲舎 雅 × コースパ が提供するコーヒー
SUGAR TOAST 

珈琲舎 雅


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