
FRUITS MUSIC
Made by FineTime Coffee Roasters
coffee and spice.(コースパ)として初めて提供するブレンドは、「FRUITS MUSIC」です。
このブレンドは、2019年TISCA国際ロースターズカップ 世界チャンピオンをはじめ、ジャパンエアロプレスチャンピオンシップ(JAC2016)3位入賞の受賞歴を持つ近藤剛さんのロースタリーカフェ、FineTime CoffeeRoastersで作られています。
同店にて焙煎されるコーヒー豆はジューシーな味わいで、元気になりたいときや、朝ちょっとだけ背中を押してもらいたいときにピッタリのブレンド。今回は「FRUIT MUSIC」 の製作者である近藤さんにcoffee and spice.(以下コースパ)がインタビューしました。
豆の魅力を引き出し合うブレンド
――近藤さん。今回は「FRUITS MUSIC」の作成ありがとうございました。早速ですが、「FRUITS MUSIC」や近藤さんのお店について色々とお話を聞かせてください。よろしくお願いします。
近藤さん:こちらこそありがとうございます。ブレンドと聞いたときはびっくりしましたが、面白いブレンドができたと思います。よろしくお願いします。
――早速ですが、今回の豆のコンセプトについて教えて下さい。
近藤さん:私が今回の話を貰ったときに真っ先に思いついたのが、”2種類のコーヒー豆を組み合わせることによって、互いの魅力を引き出すブレンドをつくる” ということ。市場の多くのブレンドは、一定の品質を保ちつつコストを安定させることにフォーカスをおいて作られている場合が多いです。
今回のブレンドは上記のような目的ではなく、あくまでも特徴の違う高品質の豆をかけ合わせて、お互いの魅力を引き出すことをコンセプトにしています。
例えば、このシトラス系のグアテマラは甘さがあってボディがしっかりした味わいです。これだけでも十分に美味しいのですが、これにエチオピアのナチュラルを加えました。エチオピアを加えることで、グアテマラにはない香りと華やかさが加わり、お互いの豆の魅力を引き出すブレンドとなっています。もちろんスペシャリティのコーヒー豆なので、シーズンごとにブレンドに使用する豆は微妙に変えていきますが、味の軸はここにおいてあります。
また、私のコーヒーの特徴は浅煎りであること。今回の「FRUITS MUSIC」も浅煎りで、深入りに比べてカフェインも多く含有しており、シャキっとしたいときや、背中を押してもらいたいときにピッタリのブレンドに仕上げました。
重要なのは「コンプレックス」
――スペシャリティコーヒーの特性上、取り扱う豆のラインナップがシーズンごとに変わりますが、FineTimeのどのコーヒーにも”近藤さんの特徴”が出ていますよね。
近藤さん:豆の選定に私の特徴が出ていると思います。
目指しているコーヒーの味があって、そのコンセプトに外れている豆は買わないんですよ。例えば、「シトラスだけではなく+なにかがあるコーヒー豆」みたいな。フルーティで酸味があり、さらにプラスして特徴があるもの。
つまりなるべく「コンプレックス」なもの。良いコーヒーの条件として、「いろんな味が感じられる」という点が重要だと思っています。ただ、上記のようなコーヒーは一般的に非常に高価です。美味しいコーヒーの生豆はやはり高いことが多い。だけどそんな良いコーヒーをお客さんに身近に飲んでほしいから、いろいろな生豆屋を回ります。購入する店舗を一社だけに絞っているロースターさんも多いですが、私は複数社から購入しています。
いろいろな生豆屋に行ってカッピング※を片っ端からおこなって、これだ!と思った豆だけを買うという信念があります。
――その作業はとっても大変ですね。
近藤さん:その作業にそれほどの価値があるということです。結局、生豆の質で8割方の味が決まる。焙煎を教えてほしいと言われることがよくあるのですが、焙煎だけを覚えても意味がない。美味しくないものを焙煎で美味しくすることはできないです。焙煎は豆の良さを引き出す手法にすぎません。
だからお店で扱う豆も品質を保つために6~7種類にとどめています。
今のお店の規模だとそこまでが限界で、それ以上は古い豆がのこってしまいます。生豆は1年以内に使い切るのがベストです。
それ以上になると品質が下がり、味が格段に落ちてしまいます。
今回の「FRUITS MUSIC」も自信を持って選定したブレンドを組み合わせているので、美味しく飲んでいただけると思っています。
焙煎は天ぷらに似ている
――近藤さんが数々の大会で賞を獲ったのは、繊細な味を感じとれる舌をもっているからだと思いますが、どのようにしてその舌を培ったのですか?
近藤さん:私はコーヒー屋になる前は金融業界に勤めていたんです。そのころからエンゲル係数がめちゃめちゃ高くて、美味しいものがあるって聞いたらどこにでも飛んでいきました。パリとか特にすごい好きで、10回くらい食べ歩きに行きました(笑)
―パリで食べ歩きツアー・・・!
近藤さん:そう。食べ歩きです。そのときに感じたのが、各ジャンルのトップのお店の味へのこだわり。それって経験しないとわからないですが、一般の店とくらべて全く質が違うんです。ほんとにすごい差があって。想像を超えて美味しいです。日本で味の差を感じた例でいうと、天ぷら。
――天ぷらですか?
近藤さん:私はむかし、天ぷらの魅力がわからなくて。カロリーのために衣を剥がして食べていたくらいです。(笑)
―もったいない!
近藤さん:でも、本当に美味しい天ぷらを食べたときにすごい衝撃を受けて、なぜ天ぷらにするのかがわかりました。味が凝縮されているからだって。その店ではイカの天ぷらを食べたんですが、イカを刺し身で食うより火を通すことで味が凝縮されるんです。店主に話を聞くと、”本当に美味しい天ぷらはいかに火を通して味が凝縮されるかを考えている”と。素材によって火の通し方や揚げ方を変えているということをそこで初めて知りました。そういうのって知らないとわからないから、知識や経験で舌が鍛えられた部分もあります。
実は焙煎にも同じことが言えて、焙煎機や周りの環境、扱う豆によって使い方を変える必要があります。コーヒーにもそういう細かいけど決定的に違う何かがあるんじゃないかって思ったのが、コーヒーを飲み始めたきっかけです。私だけではなくロースターは大体みんな、ステーキの焼き方とか天ぷらの揚げ方とかに興味があるんじゃないでしょうか。火を通すのに興味があるから。(笑)
似てますよ、焙煎と天ぷら。
カッピング会でトレンドがわかる
――Fine Timeといえば浅煎りのコーヒーですが、昔から浅煎りが好きだったんですか?
近藤さん:私がコーヒーに興味を持った当初は浅煎りを知らなくて、初めて飲んだときは「苦くないしこれはコーヒーじゃないな」と思いました。なにこれ?って。
最初はパリで浅煎りのコーヒを飲んだんですよ。
Tim wendelboeのコーヒー豆をエアロプレスで。10年くらい前の出始めの頃だと思います。最初「なにこれ?」っていう感じだったのですが、浅煎りを飲み続けていくうちにだんだん魅力に気づいて。その後にさらに豆の違いを知るために、丸山さんとかフグレンさん※のカッピングに行って味の違いがわかるようになりました。
そのときに感じたのが、自分の店の豆のカッピングだけやると視野が狭くなること。同じ豆でも、継続して行えば経年変化はわかるようになりますが。コーヒー業界の最新のトレンドを追うには、他の人の豆をカッピングすることも重要だったりします。
生豆の買付のときに良くても届いたときには評価の下がる豆もあるんです。焙煎が良くないのか、生豆が悪くなったのかカッピングスキルがないと判断がつきにくいです。なので、なるべく大きの情報を取るように心がけています。より多くのカッピング会に参加してその年のトレンドを知るようにしています。
――FineTimeではカッピング会を盛んに行なっていますよね。
近藤さん:最近ではカッピング会をやるお店が減ってきているし、自分の店の味だけだともう視野が狭くなるなと思って。だから、当初はカッピング会を毎週土曜日だけやっていました。
これが反響よくて、週二回に増やすとなった時に、どうせやるなら他のコーヒー屋さんにもやってもらおうと思って水曜もカッピング会をはじめました。
だから水曜日は他のコーヒー屋さんがうちの店に来ることも多いです。
「FRUITS MUSIC」を作成したときもそうですが、カッピング会をヒントにいろいろなアイディアを貰っています。
コミュニティとしてのFine Time
――近藤さんのお店には本当にいろいろなお客さんが来ますよね。常連のお父さんからコーヒー関係のお仕事をしている人まで。近藤さんの軽快なトークを聞きに。(笑)
近藤さん:そう。(笑) この店の造りはバーを意識していて、カウンター越しに私たちとお客様が会話できるようになっています。そしてコミュニティスペースのように、お客さん同士がコミュニケーションを取る場にもなっています。私も趣味が合いそうなお客さん同士を紹介することがあります。
――私も色々な人を紹介してもらいました。
近藤さん:お客さん同士が会話できるカフェってなかなかないでしょう。お酒を飲めない人が「バーみたいに、お店の人やお客さん同士でコミュニケーションを取る場所があるんですね!」と喜んでくれるんです。もちろん奥にはテーブルがあるので、落ち着いてコーヒーを楽しみたい方は奥に案内しています。
――近藤さんは本当にコーヒー業界のトレンドに敏感だと驚かされます。
近藤さん:金融業界にいた頃は情報をとることが仕事だったから、それが役立っています。情報をとることって重要だと思いませんか?でも一人でやっていたら全ての情報はとりきれない。
――トレンドの流れはすごく早いですよね。確かに一人だと拾いきれないです。でもFineTimeに来ると大体の情報が集まります。
近藤さん:いかにネットワークがあるかっていうのが重要で。例えばエスプレッソ。大会で評価されるエスプレッソは昔は液体がシャバシャバだったのがいつのまにかトロトロなものになっていて。そういうことも一人でやっていたらわからない。だから広くネットワークを持つことが大事です。だからオープンに情報交換をすることは重要だと思っています。
コーヒー屋ってそんなイメージじゃ無いと思うんですよ。昔は腕は見て盗めって感じの業界だったけれど変わりつつある。いろいろな情報を交換して、みんなで日々高め合っている。
幸いここには沢山のお客さんがいて、コーヒーはもちろんそれ以外でも色々な情報が入ってくるし、同じくらい与える場所となっています。
――コーヒー好きの人たちが繋がって情報を共有したり、なんとなく入っておしゃべりをしていくFineTimeはとても素敵です。
そんな素敵なお店とコラボしてブレンドコーヒーを出せてとっても嬉しいです。近藤さん、今回はありがとうございました。
近藤さん:こちらこそありがとうございました。是非「FRUITS MUSIC」を購入してみてくださいね。お店へのご来店もおまちしています。
「FRUITS MUSIC」の美味しい飲み方
近藤さんオススメのレシピ
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■エアロプレス
コーヒー豆:16グラム(挽目細かめ)
お湯の温度:87~88℃
お湯の量 :200CC(蒸らし60CC+)
①まず、60CCのお湯をそそぎ、6回かき混ぜる。
②20秒蒸らす
③残り140CC淹れて、6回かき混ぜて1分待ったら、30秒蒸らす。
④一定の圧力をかけて抽出する。
※手際良く。もたもたしていると味にばらつきが出る。
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